2019.08.19

伝統の朝顔の20周年

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 夏になると、変化朝顔を見に佐倉の歴博に行きたくなる。

でも、歴博は行くには時間はかかるし、暑いしでなかなか行く勇気が出ない場所でもある。しかも、朝顔は朝早い植物だから、昼頃にはしぼんでしまう品種も少なくない(ただし、変化朝顔は遅くまで開いている品種も結構ある)から、向こうに10時ぐらいには着きたい。

 伝統の朝顔展をやっているくらしの植物苑までは京成佐倉の駅から歩いて25分、バスを使っても待ち時間があるからそんなに時間は変わらない。JR佐倉からではもっと距離があるからバスを使うしかない。

 そんなこんなで結局行かずじまいになる年も少なくないのだ。

 でも今年は歴博が朝顔を初めて20年ということで本館でもミニ企画展をやっているから何とか行く時間を作ろうとは思っていたところに、友人から、「8月17日に行かないか?」という誘いを受けた。この日は歴博フォーラムとして「伝統の朝顔20年の歩み」という講演会もあるとのことで、「東京36度」という予報の中早起きをしていってきた。

10時半前にはくらしの植物苑についたけれど、ひたすら「暑い!」。パッと見たところ、「これは新しい!」というものも見えなかったけれど、パネルから見て回る。

 


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ふむふむ・・・新しい朝顔・・・歴博で見つかった新たな品種や過去にはあったけれど、消滅してしまっていたものの復元などが出ているらしい。

そういわれてじっくり見て見ると、

 

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青い牡丹咲きの朝顔なんだけれど、花弁の色が折りたたまれているところは濃い色というように、場所に合わせて違う色をしている。名前が419系統(整理番号?)の出物で「黄/抱/常葉(ここまで葉っぱ)紫/丸咲/牡丹(ここまで花)」。

この花は419系統のこの花と同じ遺伝子を持っているのだ。ただし、どちらも種を付けない花(めしべやおしべがないが花弁に変わってしまっている)なので、牡丹咲きにもなっていない普通の朝顔(親木)からとった種をまくことによって、ごくわずかな確率のもとで現れてくる希少花なのだ。

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 実際に種を買ったりもらったりして家で育ててみても、こうした出物になることはまずない・・・というか私は一度もないし、他の友達に聞いても「出た」という話は聞かない。

 出物から種を取ることができない以上、何百本も育てて、その中から見つけることしかできていないらしい。しかも一年草だから秋(または冬)には枯れてしまう。何とも儚い。

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これも朝顔。渦小人。今回は花の咲いたものはなかったけれど、こんなのを見ていると奇形だということがよくわかる。

もう少し暑さがましだったら、もっとじっくり見たかもしれないけれど、私たちは暑さに負けて本館に退避。

本館で少し展示を見てからレストランに。11時半だというのにもう満員でしばし待たされたが、無事に12時前に食事にありつけた。

 午後からは第111回歴博フォーラム「伝統の朝顔20年の歩み」

辻誠一郎先生(東京大学名誉教授)による「伝統の朝顔前夜」の話。どれほどの急展開だったか捧腹絶倒のおもしろさ。1999年8月に開催するために、1999年4月に九州大学の仁田坂先生のところへ行って、種を分けてもらったとか・・・

それを受けて立つ仁田坂英二先生(九州大学准教授)。「変化朝顔」と言えば、この人。「余談ですが」から始まって、余談がかなり長かったけれど、歴博で出している「伝統の朝顔」の3冊の図録の話など、裏話に終始していたような気もする。家に帰ってからいただいたリーフレットを読んだ限りでは「聞いてない」話ばかりだった気も・・・

国立生物学研究所の星野敦先生、生物学の話かと思ったら、必ずしもそうではなくて、「歴博」ということで意識して話されたのだと思うけれど、江戸時代の文献などを調べ、変化朝顔のルーツ、朝顔のルーツが松山アサガオなのか黒白江南花(こくびゃくこうなんか)なのかということをDNA解析を通じて調べた話。この話の中で「最近の高校の生物の教科書にも出ている「トランスポゾン」」という言葉に引っかかった。

「トランスポゾン」という言葉はどこかで聞いたことがある程度には知っていたけれど、どんなものかはよく知らなかったのだ。もちろん、Cosが高校にいたのは最近ではないから、最近の高校の教科書も見たことがない。しかし、そんなメジャーなものがよくわからなかったのはkn後の宿題だなぁ・・・

 この後夜の予定があったので、残念ながら太田記念美術館の日野原健司先生の話や台東区中央図書館の平野恵先生の話を聞かずに帰らなければならなかった。(まあ、Cosの苦手な歴史だし…)

歴博から京成佐倉までの道は暑く、心地よい講演会の後では厳しいものがあったし、帰りの京成線は成田からの大きな荷物を持った人たちがたくさんいて、お盆の終わりを感じさせられた。

 

 

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2019.01.26

絵画の行方2019

 東郷青児記念 損保ジャパン日本興亜美術館で20191月12日~2月17日まで行われている「絵画のゆくえ2019 FACE受賞作家展」の内覧会に行ってきた。

FACEは損保ジャパン日本興亜美術館で2013年から行われている公募コンクールで、審査をした本江邦衛先生から、審査員の方たちは名前、性別、年齢などは一切知らされないまま、絵だけを見て判断するとのお話を伺った。

 それが実感できたのは2017年の優秀賞を取った石橋暢之さんの作品を見た時だったかもしれない。

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 これが優秀賞を取った「ジオラマのような風景」、緻密に緻密にボールペンで描かれたこの絵は確かに今風の描き方とはちょっと違っているようにも見える。
 彼は1944年生まれ、そして最初にとった賞が2014年国展での入選。70歳になるまで描き続けたのだろうけれど、この絵のどこにも年齢を感じさせるものはない。強いて言えばさっきも書いたように描き方が今風ではない感じはするけれど、彼のち密さはまた、Cosの好きな佐藤学と共通したものを持っている。

 正直なところ、彼があと30年描き続けることができるかどうかはかなりの疑問だし、審査員が彼の経歴などを知っていたらまた違う結果が出てきた可能性もありそうな気がする。
 

 もともとこうした「今」の絵を見るのは「これから」がどうなっていくのか、今の時代にどんな景色が広がっているのかを見るのが楽しみだったけれど、今回は正に「今」あるいは「昨日」を見たような気がした。
 2016年から2018年までのグランプリと優秀賞の受賞者の作品がそれぞれ何点かずつ展示されていて、受賞作だけでなく、いろいろな作品を見ることで全部が同じような印象しか受けないものや、一つ一つの絵の中にいくつもの方向性が見えるものなどがあって、その人の人となりが垣間見えたり、揺れ動く気持ちが見えたりしてとても面白かった。

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                  遠藤美香 「宙返り」

 中に入ってまず目につくのがこの大きな白黒の絵・・・と思っていたのだが、実はこれは木版画なのだ。あまりの大きさと鮮明さにてっきり絵だと思ったのだが、そういわれて蕎麦によってじっくり見ると確かに黒が柔らかい。その柔らかさがこの絵の雰囲気になっていて、きりっと描いているようでいながらどこか柔らかい感じがする。グランプリをとった作品は「水仙」という作品でこれとは違っているのだけれど、私にはこっちのほうが広がりがあって好きかもしれない。

 そしてその奥に入ると、

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 この写真からはわからないけれど、かなり暗くされた部屋にまず目につくのがこの顔たち。

 唐仁原希さんの「ママの声が聞こえる」(写真の方が唐仁原さん。絵のイメージとは違って明るい方)。

 彼女の描く絵はもう一種類違った感じのたとえば「ここにいたいから」

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といった種類のものもある。ちょっと見ると何の変哲もないかのように見えるけれど、じっくり見るとどこか不気味なのが共通しているかな。

 ご本人からお話を伺うことができたのだけれど、彼女の展示スペースを暗くして、どちらかというと上のほうに絵を展示することで、昔のヨーロッパでの展示の雰囲気を出したかったとのこと。たしかに不思議などこかミスマッチしているかのような空間だった。


 そして、どこがいいのか自分でもよくわからないけれど、目が離せなくなったのが、

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FACE2018グランプリの仙石裕美の「それが来るたびに跳ぶ、降り立つ地面は飛ぶ前のそれとは異なっている」。

どこがいいのかよくわからないけれど、見たとたんに目が離せなくなった一枚。少女を描いた赤の色にひかれてしまうのかもしれない。同じような色遣いの

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「水の国の入り口」。水着の無機質さがとてもいい。このまま上がってこないかもしれない世界が描かれている気がした。

ほかの作品ももちろん賞を取るだけのことはあって、面白いものが多かった。「今」そして「これから」を垣間見てきた気がする。





 



 


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