画家が見たこども展
2020年2月15日~6月7日まで三菱一号館美術館の「画家が見たこども展」の内覧会に行ってきました。(写真はすべてこの内覧会で特別な許可を頂いて撮影したものです)
コロナウイルスの感染予防、拡散防止のためこの直後の2月28日から3月16日までは臨時休館となってしまった。
だからというわけではないが、硬い表情のこどもの絵からのスタート。その子どもの姿を見たとたんにドキッとした。
モンヴェルのブレのヴェルナールとロジェ。この写真から伝わるかどうかわからないけれど、この二人の子どもの表情は硬く、何をするでもなくただ立っているだけ。二人とも同じ服装をして、野原にたっている。
ヨーロッパ中世ではこどもは人間扱いもされなかったともいうけれど、そんな雰囲気が伝わってくるような絵。景色の柔らかさと比べるとこどもの固さが響いてくる。
アリエスの「子供の誕生」という本の題名が即座に脳裏にひらめいた。(あっ、「子供の誕生」は一度は読んでみたいと思いつつ、いまだに題名しか知らないのだが、こどもに対する教育の必読の書という印象を持ち続けている)
奥にあるのはマティの「室内の子どもと女性」。こっちのほうがまだ感情を感じられるので、見ただけでドキッとするようなことはない。
そして、このゴッホの「マルセル・ルーランの肖像」(写真左側)も子どもなのに大人のような表情を浮かべている。
子どもに対する見方が今と全く違っていたんだろうなぁと想像がつく。
しかし、実際にはそうした絵は多くはなく、ほとんどは子供らしい描き方をしている。写真の右側のハーンの「ミミの横顔のある静物」では「食べたいんだろうなぁ」というごく普通の印象を受けた。
三菱一号館美術館所蔵のヴァロットンの「女の子たち」まで来ると女の子たちの会話が聞こえてきそうなほどである。(このコーナーは誰でも写真撮影可)
そして、次第に子どもたちの表情が豊かになってくる。必ずしもかわいらしく、こどもらしく描くわけではないけれど、情景が思い浮かび、こどものいる風景の中の子どもが生き生きしてくる。
(ガラスに映ってしまって、かなり見づらい写真になってしまったのはとても残念だが、どうやってもうまく取れなかったのだ…)
ドニの「赤いエプロンを着た子ども」と向こう側がボナールの「ル・グラン=ランスの家族」。ドニの「赤いエプロンを着た子ども」の表情ははっきり書き込まれているわけではないのに、素直さ、やわらかさ、あどけなさが伝わってくるし、ボナールの方も、どんな情景だったのかが伝わってくる。表情などは全く分からないのに。
そして今回はコロナウイルスの感染予防のため、予定されていた高橋館長とTakさんのギャラリートークは中止だったけれど、高橋館長とTakさんのお話は多少うかがうことができた。
そこでは、三菱一号館美術館とフランスのボナール美術館の主催で今回の展覧会ができたこと。ただ単純に「こども」を展示したのではなく、こどもの描き方の変化などについての話などを伺うことができた。その視点から今回の展示を見ると表情の違い、描き方の違いがはっきりと見えてきて面白い。
そして、高橋館長にとっても非常に思い入れのある美術展になったことなどを伺った。
この四月で三菱一号館美術館は10周年を迎える。あっという間だった気がするのは私の年かな。
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