2018.10.01

日本画の挑戦者たち

先日、山種美術館の「[企画展]日本画の挑戦者たち-大観・春草・古径・御舟- 」の内覧会に行ってきました。この記事の写真は全て許可を受けて撮影したものです。

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1898年、横山大観らを率いて岡倉天心が設立した日本美術院ができてから今年で120年。この日本美術院で画家たちが自分自身の中から、西洋に触れることで、新しい日本画に挑戦し続けた結果をつぶさに見ることができる。さっと見過ごしてしまえば、それまでではあるけれど、どんな挑戦をしているのか、そこに注目することでまた違った日本画の楽しみ方ができる。

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                         「猫」小林古径 山種美術館

 真っ先に目に付くのがこの猫。いまひとつ上手く撮れていないけれど、きりっとした猫の姿お出迎えはうれしい。
 このような姿勢や耳の形はエジプトのバステト神とも共通した描かれ方なのだだそうだ。

 そして、

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                      「不老門・長生殿」 橋本雅邦 山種美術館

 この橋本雅邦の不老門と長生殿。文学や謡曲などに引用されていて、吉祥のモチーフとして知られるのだそうだけれど、(たぶん)中国の里からは離れた山にあるのだろう、静かな空気が伝わってくる。

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                       「不動明王」 下村観山 山種美術館

 不動明王は艱難を焼き尽くし、衆生を救うのだそうだが、この写真を見る限り雲に乗っているだけに見える。だが、そばによって見るとこの不動明王、実は筋肉がついた立派な体をしているのである。その上、よく見ると乗っている雲も直線的。直線的な雲を描いた日本画もあるだろうけれど、この構図あんまり日本画にはなさそうな・・・と思って画面の左下の部分をじっくりと見るとそこにはローマ字で「Kanzan」・・・Cosに読み取れたのは最初のKanだけなのでzanなのかどうかは分からないんだけど・・・
 この絵は観山が英国留学中に描いたものではないかと言うことだが、西洋画の影響がはっきりと出ているようにも見える。
 ぜひ、実物をじっくり見てもらいたいなぁ。

 

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                      「清姫 寝所」 小林古径 山種美術館

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                     「清姫 鐘巻」 小林古径 山種美術館

 上の2枚は小林古径の描いた清姫(全8枚)の中の2枚。
紀州の道成寺伝説の安珍清姫の物語を描いたもの。雅の世界を垣間見るような高貴さのある絵。 古径が自分の手元においたと言うだけの事はある気がする。

 この絵の清姫はいたいけな少女のようでもあり、決して人をうらんだり憎んだりはしないようにも見えるのに、安珍のうそやごまかしが彼女を蛇の姿にして焼き殺そうとまでする。古径の絵を見ていると恨みや憎しみよりも悲しみが勝るようなこの清姫の気持が伝わってくるような気もしてくる。
リンク先のウィキペディアの記事を読むと印象がまったく違うのだ。

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                       「柿」 速水御舟 山種美術館

 この柿の絵も挑戦的な日本画。柿の立体感を見事に描いている。この絵を見たとたんに筆柿が食べたくなるのは当然だろう。さすが御舟。

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                      「牡丹花(墨牡丹)」速水御舟 山種美術館

 普通ならば色をつけて描くであろう花を墨で描き、逆に葉を色をつけて描いたと言う御舟の挑戦。見ていると色が見えてくるから不思議だ。

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                     「春昼」 速水御舟 山種美術館 (10月14日までの展示)

 これも御舟。のどかなわらぶき屋根の家とも見えるけれど、黒い戸口がどことなく不安を感じさせる。この戸口の中にははしごが描かれているのだそうだけれど、実際に見た限りでは分からなかった。そして、家に帰ってから拡大してじっくり見たら・・・見えた・・・なんだか不気味。
 もちろん会場が決して明るくないこともあるだろうけれど、解説をしてくださった明治学院大学教授の山下祐二氏によれば、このはしごの位置も怖いものがあるとか。何を思って御舟はこの絵を描いたのだろう?

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                      「春庭」 小茂田 青樹 山種美術館

 ちょっと季節はずれているけれど、生き生きとした春の庭。青樹がこの絵によってそれまでの作風から脱却して精密描写や質感表現より写実性を追及するようになっていく。
 確かに西洋的な風景画にかなり共通した印象があるような気がする。

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                      「水花火(螺)」 宮廻 正明 山種美術館

 これは今回の展示の中で一番新しい2012年の作品。背景の水は点描のように描かれている。薄い和紙に裏彩色を用いた独自の作風を確立したのだそうだ。これがそうなのかどうか・・・よく分からない。
 しかし、日本画の世界の広がりを確実に感じさせる一枚。この人のほかの絵も見てみたい。

 

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 最後はお約束の和菓子。私が一番美味しいと思ったのは・・・阿蘭陀菊図をモチーフにしたもの。どれだと思いますか?
 正解は会場で。











 



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2018.07.18

モネ それからの100年

2018年7月14日(土)~9月24日(月)までみなとみらいの横浜美術館で行われてる「モネ それからの100年」展の夜間特別鑑賞会に行ってきました。

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クロード・モネClaude Monet, (1840年11月14日 - 1926年12月5日)が好きな人は多いし、Cosももちろんその一人。と言ってもモネなら何でもいいと言うわけじゃない。今回だって、後から考えてみれば、すごい作品ばかりが来ていたわけじゃないのに、「わたしがみつける新しいモネ」というサブタイトルに引っ張り込まれた感じがする。

モネの作品と現代の作家の作品を並べて展示することにより、その中の共通したものを見て欲しい、新しいモネを見つけて欲しいということなんだろうな。


     今回の写真は全て夜間特別鑑賞会のため特別に撮影許可をいただいたものです。

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どちらもモネの睡蓮。上手く撮れていないけれど、左の「睡蓮」(1906年)は目玉の一つで、この、「モネ それからの100年」と言えば、この作品が使われている。
右側の作品が「睡蓮、水草の反映」1914-17年。水草も睡蓮も途中で切れていてその向こうまで続いていることを感じさせる。これは4章「フレームを超えて」と題されたコーナーのモネの絵。
確かに、左の睡蓮は水面の広がりを感じさせるし、右の睡蓮はすべてがもっと広く広がっている感じがして、どちらもフレームの中に収まっていない感じはする。

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右はサムフランシスの「Simplicity(SEP80-68)。左はアンディ・ウォーホールの「花」・・・
確かにどちらもフレームにおさまりきってないけど・・・そうくるか?

まあ、サム・フランシスは好きなので、いいんだけど・・・モネの絵の中に同じものを感じるかと聞かれれば、「なんか違う」と言う気がする。

(いい写真がなくて、ぼけてしまっているけれど)

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色を重ねて光を表現している「セーヌ河の日没(冬)」と

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モーリス・ルイスの「ワイン」(左)と「金色と緑色」(右)はとてもよく分かる気がする。どちらも、色を重ねることによってはじめて出てくる美と言う感じがする。ただし、Cosはモネとモーリス・ルイスを並べてみることになるなんて、夢にも思わなかったけれど。絵のサイズからして違いすぎるし・・
同じコーナーにはマイク・ロスコーの作品もあったし、Cosの好きな現代作家が目白押しだったのはとてもうれしかった。

そして、モネと並べずに単体で見たらきっと印象はまったく違っただろうなと思える作品も多かった。「Ⅲモネへのオマージュ」の中で特に印象的だったのは

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左の堂本尚郎の「連鎖反応-クロードモネにささげる」と右に少しだけ見えている福田美蘭の「モネの睡蓮」。この2枚はモネを通じて初めてその共通性が見えてくるような気がする。また、ここにはないけれど、ロイ・リキテンスタインの「日本の橋のある睡蓮」も同じ。

モネはその絵を見たことのない人はいないだろうと思えるほどの画家だけれど、それが今の美術にどんな風につながってくるのか、とても面白かった。視点を変えてもう一度見ていたい美術展の一つ。

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 会場の入り口で真っ先にであうモネ「睡蓮」1914-1917.これと上にある「睡蓮、水草の反映」からの100年。実はモネがこれほどまでに現代美術に近かったことを感じさせた一枚。
9月までやっているので、もう一度確かめに行きたい。






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2018.07.15

千秋美術館と秋田県立美術館

 今回の東北旅行の最後は秋田市内。

暑いのである。出かける前に聞いた話では東北は天気が悪く寒い・・というか涼しいはずだったのだ。
 それなのに、Cosが行ったら、多少の雨はあっても毎日お日様は元気に地上を照らし、暑さの苦手なCosはおろおろ歩いたのだ。

 この日も朝一番でどこも開いていない時間に千秋公園を散歩・・・暑くて登りで・・・まったくCos向きではなかった。

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 なんとなく面白そうだなと思ったのだが・・・

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これは八幡秋田神社千秋公園内にある。一度火事で焼けて平成20年に再建したものだそうだ。

 

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 この水音につられてついふらふらと上まで上がって、

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 秋田の町を見下ろしてきた。暑かった・・・

というわけで、この日はオープンとほぼ同時にまず千秋美術館へ。「秋田蘭画ことはじめ

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 秋田蘭画という言葉は聞き覚えのある言葉だけれど、実はよく知らなかった。秋田半で始められた洋風画なのだそうだ。悲しいことに、会期末だったので、フライヤーがなかった。

もちろん撮影禁止だから手元にある資料は出品リストだけなので、得の紹介をできないのが残念だけど、なかなか面白かった。実際に秋田蘭画がどんなのものなのかはリンク先にあるものを見てもらうしかないけれど、このページの一番右の獅子は小田野直武の獅子図。なかなか面白い表情をしている。

 佐竹曙山の「燕子花にナイフ図」(リンク先中央)も何でナイフ?という疑問はあるもののとてもいい絵だった。
 こういう絵はは前にも見たことがあり、たぶん東京でも何かしら見るチャンスはあるだろうから、そのときを楽しみにしよう。

東北最後の美術館は秋田県立美術館。
企画展は「夜と美術」(2018.07.08まで)。暑い日差しの中ではこのタイトルが人をひきつける。思わず吸い寄せられるようにふらふらと・・・

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ここは平野政吉美術財団の藤田嗣治作品が展示されており、その中でも「秋田の年中行事」という大きな壁画を中心のワンフロアとその上の吹き抜けのまわりのギャラリーとに分かれる。
 藤田嗣治の年中行事は見ごたえもあるしなかなかいい作品だった。さらに、吹き抜けの上側から見ることができるので、また違った表情を見せてくれる。

 ただ、ギャラリー自体は余りなく、また、テーマに沿った作品をがんばって集めた感がある。

さらに作品のうちの1/3ぐらいは一人の人の写真で占められていて・・・写真としては悪くはないけれど・・・

 このフライヤー にある舘岡栗山の「かまくらは」涼しそうでよかった。

こうして東北の駆け足のたびが終わったけれど、できればもっと自然を楽しむ時間が欲しかった。・・・もっと気候のいいときに。

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秋田はチームラボ

 東京だって2箇所ぐらいでチームラボをやっているのである。それにもかかわらず、今回の東北行きを決めたのは秋田でチームラボをやると聞いたからである。

 しかも諸般の事情でこの日しかいけないというぎりぎりの日程。青森のあと盛岡に泊まって、新幹線で一路大曲へ。
 大曲って花火しか知らない気がする・・・

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 ここからさらに電車に乗って横手へ。横手も焼きそばぐらいしか知らない・・・あぁ・・・地理は苦手なんだ・・・横手駅からさらにバスに乗って、「ふるさと村」へ。

この中に今回の目的地秋田近代美術館がある。

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これは美術館側からふるさと村を撮ったので、美術館自体は写っていない。
秋田県立美術館は独自の収蔵品も持っているようだが、今回はほとんどがチームラボ。

踊る!アート展と学ぶ!未来の遊園地 と題して、5階と6階のフロアをほぼ全部使っての展示。

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最初に見たのが、百年海図巻 アニメーションのジオラマ リンク先にアニメーションがあるけれど、波の一つ一つを見ていても飽きない。
 壁面に映し出された海は床にも反射され、その床の波の中に人がいる。床に座り込んでじっと見ているCos。リンク先の映像はわざとピントを甘くしているような気がするけれど、実際にはもっとくっきりした波。

 いい音楽を聞きながらならずっとそこにいてもいいような気がする。

花と人、コントロールできないけれども、共に生きる  これは見ているだけなのか、それともこちらの存在に何か反応をしているのかよく分からなかった。だけど、そこで映像と人が一体になるのかも。

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世界はこんなにもやさしく、うつくしい これは前に茨城の「県北」展で見たのと同じもの。

上から漢字が落ちてきて、その漢字に触るとそれが実際に現れる。この写真ではたぶん「虹」に触れたのだろう。触れることによって言葉がどんな風に表れるのか、必ずしも同じとは限らない(様な気がする)、ある程度の規則性はあるけれど、場所によって表れ方に違いがある。
 漢字を見たとき、私たちはそれを意味でとらえるけれど、ここではそれが絵になって表れる感じ。

リンク先では触れなくても映像化するけれど、実際にやってみたところは触らないと変わらない気がする。

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もちろん、子どもたちが我先に漢字に触って楽しんでいるし、見ているこちらもそれがまた楽しい。
 こうした展示は人が多すぎるとつまらないけれど、写真の程度の人数なら、一人ひとりが楽しむこともできるし、見ていても楽しい。
 リンク先を見ればある程度は分かるけれど、これは実際の展示室で楽しまなければ、その魅力は半減してしまう。

 そして、ドアを閉められた暗い室内の決まった場所で鑑賞する追われるカラス、追うカラスも追われるカラス、そして超越する空間

これはさすがに写真をとらなかった。真っ暗な中で撮影しても実際に見たものとは程遠い内容になっているし、なんといっても自分のまわり全てに映像が動き回る。
 実際にCosの前の回に入った男の子は怖くなって逃げ出してきてしまっていた。自分自身が映像と音に包まれて、そこにいるのかいないのか、暗い中での光だからよく分からないけれど、3Dだったのではないかと思う。
 リンク先では女性がいつも見えているけれど、実際に体験してみると他の人の存在はほとんど感じない。
 「あぁ、カラスだ、」なんて思うことはあってもその光の波の中で映像を追いかけてしまっている。わくわくどきどきの5分間だった。

 たぶん、ここまでが「踊る!アート」の部分で、ここからが「学ぶ!未来の遊園地」になるんだろうと思う。

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花と共に生きる動物達 いろいろな模様をつけた動物たちが歩いてくる。そこに触れると花になったり、他のものになったり、表面だけでなく、形も変わっていく。
 これを見て思い出したのが、十和田現代美術館で見たフラワーホース。正にあれを動かした感じ。子どもたちが動物について歩き、さわり、笑い・・・楽しそうだった。

 その後は子どもたち(に限らないけれど)実際にやって楽しむコーナー。

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自分の書いた魚や亀などが泳ぎ回るお絵かき水族館

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滑り台を滑りながらボールに触ると花になる滑って育てるフルーツ畑。(小さい子限定らしく)子どもたちはすべることに熱中していて、なかなか触れようとしないのが面白かった。

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小人が住まうテーブルや(写真はないけれど)小人が住まう壁は手を置いたり、者を置いたりするとそこで目玉焼きができたりいろいろな変化を起こす。

 この辺になってくるとアートというよりもお遊びという感じかな。

Cos自身はこうした遊びが悪いとは思わないけれど、なんだか違和感を覚える。マジックボックスに慣れてしまうと、何が起きてもそれを受け入れてしまいかねない気もする。

アートとして楽しんでいる間はいいけれど、子守をさせるようになったらまずいんじゃないんだろうかと。

いやぁ、それにしてもとてもよかった。人も多すぎず少なすぎずでじっくりと堪能することができた。
 実際のところはどうか分からないけれど、東京だったら人が多すぎて「見ました」「終わりました」になってしまうんじゃないかなとも思う。そう思うとなかなかいく勇気が出ないのだが、行って来たいな。

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青森県立美術館、棟方志功記念館。

 次の日は青森。そのちょっと前までは雨ばかりで涼しそうだったのに、Cosが行った日はお日様が出てとても暑い日だったので、野外は避けたい気分。しかも途中でどっと降ったり病んでお日様が出たりで、湿度も高くクーラーのあるところへ非難。

 というわけで青森の定番、青森県立美術館へ。
三内丸山遺跡の隣にある青森県立美術館は、住宅街のちょっと先なのにそれを感じさせない広々とした空間の中にあって、それまでの暑さやバスの混雑を忘れてのびのびとした気分。
 ただここは写真撮影ができないのは相変わらず。現代の作品が多いから余計そうなんだろうけれど、ちょっと残念。

 今回の企画展は「東奥日報創刊130周年・青森放送創立65周年記念 絵画の絆「フランスと日本」展。

 ひろしま美術館の作品を持ってきたものだという。まぁ、ひろしま美術館には行ったことがないのでいいかな。
 ここで紹介したページの中にもあるモネの「セーヌ河の朝」が自然の中にあるこの美術館にとてもあっているような気がした。
 フライヤーの中にある岡鹿之助や下村観山と横山大観の合作の「松鶴」などは青森まで行ってとてもお得をした気分だった。
 でも、広島にも行ってみたいな。

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 そして、青森美術館といえば当然この青森犬。マリーゴールドのえさをもらって、熟慮している最中の青森犬。ここだけは写真がとれる。

 前回は外まで行って挨拶をしてきたけれど、今回は建物の中からご挨拶を。

そして、シャガールのアレコを展示してあるアレコホールでは2021年3月まで第1幕、第2幕、第3幕、第4幕のシャガール「アレコ」全4作品完全展示してある。(リンク先を見ると内容を見ることができます)

 ここは常設展または企画展のチケットを持っていれば見ることができる。Cosは必ずしもシャガールは好きじゃないけれど、この空間はとても好き。絵を見るための空間じゃなくて、人が集う場所としてとても素敵なところ。


新青森の駅から青森県立美術館まではコミュニティバスで行ったのだけど、すごく混んでいてセミラッシュ並み。

 帰りも同じようなことを考えた人は結構いて、やっぱりバスはかなり混んでいた。(優雅さにかけるなぁ・・・)

 この日はここから直通のバスで棟方志功記念館へ。

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こんなひなびた案内があって、「夏の展示「沢瀉の風-故郷の土に生まれ、還る」 をやっているとのことだった。
 この棟方志功記念館は

「あまり数多くの作品を展示して、観覧する人々が疲れたり、作品の印象が薄くなったりするよりは、やや少なめの作品数でも一点一点をじっくり見て欲しい」という棟方の希望により、広さが決められました。

というだけあって、本当にじっくりと絵(版画)に向き合うことのできる空間でした。

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 とても暑い日だったけれど、記念館の池を眺めながらバスの時間を待ちました。

 青森に来たのは2回目だけれど、せっかくこれだけ北に来ているのに海を見に行っていないのがとても心残り。

 いつかチャンスを見て青森の自然も楽しんで来たい。



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2018.07.07

十和田市現代美術館

6月の終わりに、東北の美術館めぐり(というほどたくさんじゃないけど)をしてきました。

まず最初は「スゥ・ドーホー:パサージュ」展の十和田市現代美術館。前回来た時と同じフラワーホースが出迎えてくれる。

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 今回のこの旅行では後で同じようなものを見ることになるのだが、もちろんこのときには気がついていない。

今回入って驚いたこと。館内の写真撮影がほぼ全てOKになっていたこと。

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 エントランスのこの床はジム・ランビーの「ゾ・ボップ」。床を眺めながら向こうの街路を眺めていると、どこか現実から離れていって、違う世界にいるような気がしてくる。
何枚かとったのだけど、どうしても光が反射してしまって上手く撮れなかった。

 今回の企画展は最初にも書いたとおり「スゥ・ドーホー:パサージュ」展。これも撮影可能。自分でとった写真はつたないものだけど、見ていると実際に見たときの感動と印象がそのままよみがえってくる。

 最初に見たのは「ファブリック・スカルプチュア・インスタレーション」

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 一番最初に見たときにはプラスチックのようにも見えたんだけど、実際には夏用のチマ・チョゴリのごく薄いポリエステルの生地で作られている。
同じような素材の作品としては東京都現代美術館(MOT)で展示された大きな作品「リフレクション」(リンク先の記事の中に写真があります)がある。これもMOTの常設に入ったところの吹き抜けに作品があり、生地のはかなさと門の堅固さとを同時に見せている不思議な作品だったけれど、今回はぱっと見るとごく普通のプラスチックでできたかのような作品なのに、じっと見ているとその幻想的な世界に引き込まれていく感じ。

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 黄色とみどりと赤の三つの作品が並べておいてあって、その中を通り抜けることができる。中を通り抜けるとき、プラスチックではない布の感触がとても不思議。
 もちろん触る事はできないけれど、ごく薄い布の持つやわらかい感じが、中に入っているフレームの作る硬そうな最初の感じを飲み込んで、なんだか幻想的な世界に入っていける。

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 こんな風に細かな部分まできちんと作りこんであって、そこだけを見るととても布には見えない。

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 中から見た幻想的な外の景色。

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 東京から離れた十和田という土地に来たということもあるけれど、違う世界に入り込んでいたひと時でした。

 映像の「マイホーム/ズ、パサージュ/ズ」はビデオ作品。上下の2つの部屋を連続して壁一枚はさんで撮っていたり、隣同士の部屋を取っていたり、一つ一つの部屋ごとに違っていて、それが社会を作っている・・みたいな感じだろうか。見入ってはしまうけれど、「どうやって作るのかなぁ」・・・になってしまった。

 企画展には3つの部屋があって上の二つがそれぞれ一つの部屋。最後の部屋が「標本シリーズ」

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 最初の部屋にありそうな部品だったり、

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これは布と繊維で描かれている絵画。ほどけていくような不思議な感じ。

 最後に常設展のコーズ・アンド・エフェクト

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 たくさんの人たちが積みあがっているというか、ぶら下がっているというか・・・

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 抱えているのではなくぶら下がっている・・・一番下が誰なのかは誰でもわかる気がする。


 この十和田現代美術館で一番会いたかった人はもちろん

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 このスタンディング・ウーマン 。怖い顔をしているんだけど、十和田まで行く理由の一つが彼女。

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 目が合うと本当に怖いんだけど・・・・

 この日は十和田泊まり。夜はレストランでバラ焼き定食。もっと肉肉しいものかと思っていたけれど、たまねぎがしっかり入っていておいしかった。

そして、翌朝の無料朝食にもバラ焼き。ただし、こちらはほとんどたまねぎ炒め。ほとんど肉がなかったのは無料だから当然かな。


 




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2018.02.16

ルドンの黒からルドン-秘密の花園へ

 三菱一号館美術館で「ルドン―秘密の花園」展(2018年2月8日~2018年5月20日)の内覧会に参加してきました。

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                グラン・ブーケ(三菱一号館美術館)(写真は全て特別に許可をいただいて撮影したものです)

 始めてルドンの黒を見て衝撃を受けたのは2007年。Bunnkamuraでの「ルドンの黒
奇怪な、でも恐怖よりも哲学のようなものを感じさせる異形の数々

このときには黒に圧倒されたけれど、その最後に色にあふれた花の絵があった。黒の対極にある色彩が心に残った。
 その心に残った色彩が2012年の三菱一号館美術「ルドンとその周辺-夢見る世紀末」。

そして今、ドムシー男爵の城館の食堂装飾画とグラン・ブーケをはじめとする秘密の花園が現れた。

 もちろん黒のルドンもたくさんあったし、その不思議な奇怪さは人の心をつかんで離さない。

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              「夢の中で」のシリーズ(三菱一号館美術館)

 



 ただ、「黒の」といわれている時代にもそれ以外の作品もたくさんあり、たとえば

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             オルセー美術館のキャリバンとキャリバンの眠りが並んでいる。

そして今回、展示室に入って一番ドキッとしたのはこの°ドムシー男爵の城館の食堂壁画

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 パネルになっているグラン・ブーケ以外はいかにも食堂にふさわしい題材と配色になっている。正直最初は「これもルドン?」と思った。華やかな花でもないし、黒のルドンでもない作品なのだが、一枚一枚を見ていくとそこにはやはりルドンがあった。

 

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 一枚一枚を見ると一つ一つの植物が、やはりルドンであって、どの花もどの枝も現実とはちょっと図土がって良そうな感じ。

 高橋館長の「前半生の黒い作品群から次第に抜け出しつつあった1890年代のルドン。そのルドンが、新たに絵画と装飾という命題に挑みながら、光と色彩を追求して言った最初の大作」という言葉がとてもしっくりとくる。

 ここではパネルで展示してあったけれど、この配色の中での青を基調とした「グラン・ブーケ」画どれだけ華やかに見えるのか・・・

 そしてもうひとつ、食堂壁画であるこれらの作品は床から2mぐらいの高さに飾られ底他のだという。その高さにあわせて、下のほうが細かく、上のほうが大きく描かれている。

 「グラン・ブーケ」を下のほうから取ってみたらこんな感じ。

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高いところにあった感じが伝わるかな。

 そして秘密の花園。

 この展示室も花園の一部だけれど、2階には花瓶に生けた花の絵が年代順に展示してあった。

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 ひろしま美術館の「青い花瓶の花」とニューヨーク近代美術館の「首の長い花瓶に生けられた野の花」の2つの花が並べて展示してあった。このひろしま美術館には一度行ってみたいなぁ・・・

 黒と奇怪さで好きになったルドンだけれど、彼の描く花は花であって花でない感じ。もっと違う作品をまた見に行きたい。





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