日本画の挑戦者たち
先日、山種美術館の「[企画展]日本画の挑戦者たち-大観・春草・古径・御舟- 」の内覧会に行ってきました。この記事の写真は全て許可を受けて撮影したものです。
「猫」小林古径 山種美術館
真っ先に目に付くのがこの猫。いまひとつ上手く撮れていないけれど、きりっとした猫の姿お出迎えはうれしい。
このような姿勢や耳の形はエジプトのバステト神とも共通した描かれ方なのだだそうだ。
この橋本雅邦の不老門と長生殿。文学や謡曲などに引用されていて、吉祥のモチーフとして知られるのだそうだけれど、(たぶん)中国の里からは離れた山にあるのだろう、静かな空気が伝わってくる。
「不動明王」 下村観山 山種美術館
不動明王は艱難を焼き尽くし、衆生を救うのだそうだが、この写真を見る限り雲に乗っているだけに見える。だが、そばによって見るとこの不動明王、実は筋肉がついた立派な体をしているのである。その上、よく見ると乗っている雲も直線的。直線的な雲を描いた日本画もあるだろうけれど、この構図あんまり日本画にはなさそうな・・・と思って画面の左下の部分をじっくりと見るとそこにはローマ字で「Kanzan」・・・Cosに読み取れたのは最初のKanだけなのでzanなのかどうかは分からないんだけど・・・
この絵は観山が英国留学中に描いたものではないかと言うことだが、西洋画の影響がはっきりと出ているようにも見える。
ぜひ、実物をじっくり見てもらいたいなぁ。
「清姫 鐘巻」 小林古径 山種美術館
上の2枚は小林古径の描いた清姫(全8枚)の中の2枚。
紀州の道成寺伝説の安珍清姫の物語を描いたもの。雅の世界を垣間見るような高貴さのある絵。 古径が自分の手元においたと言うだけの事はある気がする。
この絵の清姫はいたいけな少女のようでもあり、決して人をうらんだり憎んだりはしないようにも見えるのに、安珍のうそやごまかしが彼女を蛇の姿にして焼き殺そうとまでする。古径の絵を見ていると恨みや憎しみよりも悲しみが勝るようなこの清姫の気持が伝わってくるような気もしてくる。
リンク先のウィキペディアの記事を読むと印象がまったく違うのだ。
「柿」 速水御舟 山種美術館
この柿の絵も挑戦的な日本画。柿の立体感を見事に描いている。この絵を見たとたんに筆柿が食べたくなるのは当然だろう。さすが御舟。
「牡丹花(墨牡丹)」速水御舟 山種美術館
普通ならば色をつけて描くであろう花を墨で描き、逆に葉を色をつけて描いたと言う御舟の挑戦。見ていると色が見えてくるから不思議だ。
これも御舟。のどかなわらぶき屋根の家とも見えるけれど、黒い戸口がどことなく不安を感じさせる。この戸口の中にははしごが描かれているのだそうだけれど、実際に見た限りでは分からなかった。そして、家に帰ってから拡大してじっくり見たら・・・見えた・・・なんだか不気味。
もちろん会場が決して明るくないこともあるだろうけれど、解説をしてくださった明治学院大学教授の山下祐二氏によれば、このはしごの位置も怖いものがあるとか。何を思って御舟はこの絵を描いたのだろう?
「春庭」 小茂田 青樹 山種美術館
ちょっと季節はずれているけれど、生き生きとした春の庭。青樹がこの絵によってそれまでの作風から脱却して精密描写や質感表現より写実性を追及するようになっていく。
確かに西洋的な風景画にかなり共通した印象があるような気がする。
「水花火(螺)」 宮廻 正明 山種美術館
これは今回の展示の中で一番新しい2012年の作品。背景の水は点描のように描かれている。薄い和紙に裏彩色を用いた独自の作風を確立したのだそうだ。これがそうなのかどうか・・・よく分からない。
しかし、日本画の世界の広がりを確実に感じさせる一枚。この人のほかの絵も見てみたい。
最後はお約束の和菓子。私が一番美味しいと思ったのは・・・阿蘭陀菊図をモチーフにしたもの。どれだと思いますか?
正解は会場で。
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