ルーベンス、バロックの神髄
東京渋谷のBunkamuraで行われた「ルーベンス展 ブロガ―・スペシャルナイト」に参加してきました。
ルーベンスといえば「フランダースの犬」と反応が返ってくるくらいフランダースの犬が有名なんだけれど、Cosにとっても子どもの頃、フランダースの犬を読んで「ルーベンス」という名前を知ったのだった。
死ぬ前に一度だけ見たいというほどの絵ってどんなすごい絵だろうかとと思っていたのにそのモデルとなったアントワーヌ大聖堂の「キリスト降架」の写真を見たときには「えっ、こんな絵だったの?」とかなりがっかりしたのをはっきり覚えている。
子ども心にいったいどんな絵を期待していたのか、自分でもよくわからないけれど、ずいぶんと長い間もやもやとしたものが残っていた。
そんなルーベンスの作品とじっくり向き合うことのできるというのでかなり前から楽しみにしていたので、ブロガ―・スペシャルナイトと聞いて一も二もなく参加を決めてしまった。
Bunkamuraのチーフキュレーターの宮澤政男さんとTBSのアナウンサーの小林悠さんの座談会は展示室内。当然のことながら飲食禁止の展示室内だからお二人とも1時間にわたって水も飲めずなかなか大変だったご様子。
お二人の後ろに映っているのは日本初公開となった「復活のキリスト」、その向こうは「アッシジの聖フランチェスコ」
この復活のキリストは堂々とした肉体を持っていて、Cosの持っているキリストのイメージとはずいぶんと異なっている。だけど、キリストということにこだわらなければ、強い意志・・・鉄の意志だろうか・・・を示している男の姿は力強さと冷静さを持っていて「復活」という言葉にはふさわしい気がする。さらに左上のほうのあどけない天使の姿も現世とは別の次元からやってきて現世に対峙していかなければならない男を祝福しているかのようにも見える。
たぶん、この辺のところがなんか違う感じがする部分なんだろうな。
だからこうした「ロムルスとレムスの発見」だとすごくすんなり入ってくるのかもしれない。
これは日本初公開なのだそうだけれど、宮澤政男さんはこれの版画をオークションで買ったのだという。それほど気に行っていた作品が日本に来たからかとても楽しそうにこの絵のことを語っていた。
主人公の子供たちが大きく描かれていることや絵の中心があいていて、見る人は絵に描かれたものを潤に見ていくことになるという話はとても興味深かった。
確かに子供からスタートしてぐるっと左回りに視線が回っていくのが自分でもわかる。
狼に育てられた子供、川の精、子どもたちを発見した羊飼い、そしてきつつき。ストーリーの通りに見ていくことになる。
そして、図録などでははっきりしないけれど、実際の絵を見るとそこには魚が泳いでいたりカニがいたりするのも原画ならではの楽しみ方なのだそうだ。
この子供の生き生きとした愛らしい表情はこののちルノアールなどにも受け継がれていくのだという(この絵でそういう説明があったかどうかは覚えてないけれど)
そんな所も見比べてみると面白いのかもしれない。
(左側が「眠る二人の子供たち」右が「天使からパンと水を受け取る予言者エリア」
この宮澤さんが持っていたりする版画はこの時代にはどんな絵なのか人に知らしめるためにはとても重要な役割をしていた。だからなのか、ルーベンスは版画家たちにかなり細かく注文をつけていたのだそうだ。
この版画がそうだったかどうかは分からないけれど、「ソドムを去るロトとその家族」の版画を見たときにはなんだか嬉しくなってしまった。でも・・・できれば原画と並べてみることができればその時代の人たちが版画を見て原画を思うときの気持ちがもう少しわかったのかもしれない。
人々は版画を見て「どんな絵なんだろう?」とイメージを膨らませ、最終的にはお金を払ってその絵を見せてもらう。お金のない人たちは版画を見てあれこれ考えるだけで満足しなければならないけれど、ネロは版画を見たからこそ原画を見たかったのかもしれないなぁ・・・そう考えると子どものころからの疑問がかなり解消されたような気がする。
私たちも「キリスト降架」の版画を見て、アントワープ大聖堂に思いをはせよう。
いつの日にか原画を見に行きたいものだけれど・・・・そんな日は来るかなぁ・・・?
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コメント
こんばんは。
一時間水も飲めないって、参加者はどうだったんですか?
復活のキリスト、については、Cosさん疑問みたいですが、復活とは、肉体の復活のことですから、逞しくて良いのです。
最後のコーナーに、ルーベンスの共同作業についてありましたね。
人物はルーベンスが、風景や動物は他の画家が描いたとか、なかなか面白い。
投稿: oki | 2013.03.19 22:40
聞く側なら1時間や2時間どうということはないと思いますが、1時間しゃべりっぱなしで水分補給ができないとちょっときついかな。
(時々しゃべる程度なら平気ですが)
ルーベンスの共同作業の話もとても面白かったです。
もともと「工房作」が多い時代だし、受けた注文をこなすためには(苦手ということではなく)自分の得意とするものを描いたんじゃないかという話でした。
投稿: Cos | 2013.03.20 06:40