父をめぐる旅 中村正義の生涯
よみうりランドの近くに小さな「中村正義の美術館」がある。春と秋しか開館していない静かな住宅街の中にある美術館。
豊かな才能を持ち、同じ人が描いたのかと疑いたくなるほどいろいろな日本画を描き続けた中村正義の娘さんが守っている美術館で、Cosが行った時にも娘さんがいらした。
彼女が父親の足跡をたどる旅をするという映画が、東京都写真美術館(1・27まで)や川崎アートセンター(少なくとも2月一杯やっていそう)で上映されている。
中村正義という人がどんな人だったのか、「黒い舞妓」という不思議な絵を描いた人・・・反骨の画家といわれるけれど、どんな絵を描いてきた人だったのか・・・公開前からとても見たいと思っていた映画だった。
22歳で日展に入選し、36歳で審査員になったものの、その運営や体質に対して反旗を翻し、日本の美術界から外れたところで絵を描き続けたという。
映画は娘が父の足跡をたどるというよりも中村正義のその絵と生涯を娘の目を通じて語るというほうがふさわしいような気がしたけれど、どこまでも「日展」に代表される権力にこびることなく自分の絵を貫き通した彼の姿がしっかり伝わってくる。
中でも、日本の美術界が牛耳っていると思われる銀座三越の画廊で開かれた個展、そしてそこに出された作品は彼の意気込みがどれほどのものであったのかが伝わってくる。
決して抽象的でない、正統派(じゃないかと思える)日本画の風景画を出品し、すぐに売れてしまったのだという。映画の中にあらわれたその絵を見たとき、「速水御舟の再来」と言われた理由がとてもよくわかった気がする。
権力になびくことなく最後まで自分自身を貫き通した彼の姿が伝わってくるとてもいい映画だった。
でも・・・彼の家族は大変だっただろうなぁ・・・
| 固定リンク
この記事へのコメントは終了しました。
コメント
良い映画でしたね。
中村が描いた場所を娘さんが、訪れるというか、何処で作品を描いたのか探す旅。
中村は晩年は、日展の牙城だった東京都美術館に対抗して、絵も描かず自分のグループの展覧会を企画したとか。
そんなうちに病魔が襲ったんですよね。
しかし、彼の反骨意識は今の画家にはみられません、今の画家に参考にして欲しい。
家族はおっしゃるように大変だったでしょうが、今でも娘さんが、美術館を切り盛りしている、一家の誇りかな。
投稿: oki | 2013.02.12 05:27
はい。いい映画でした。
以前美術館にお邪魔して娘さんとお話をしましたけれど、とても穏やかな、お父様を心から慕っていらっしゃるというイメージを受けました。
春になったらまた行ってこようと思います。
投稿: Cos | 2013.02.17 15:02