うちからだとかなり遠い水戸芸術館に行こうと思ったのはこの一枚の写真を見たとき。

この写真が特に優れているというわけでもないのだと思うけれど、谷に向けて赤い服を着た人がチェロを弾いている。
それだけを見てチェ・スーメイに惹かれたのだ
しかも彼女は音楽家の家に生まれてチェロを弾くという。
そこには音楽と美術の接点が何かあるのではないかと思わせるような作品・・・
この時点ではこの作品がどんなものなのかはまったくわかっていなかったけれど、谷に向かってチェロを弾くという行為そのものがCosの心をとらえて離さなかった。
ただ、どんな人だかほとんどわからない状態だったので、行ってみてつまらなかったらどうしようという不安もあったのだが、結局のところ好奇心が勝って水戸へ。
水戸芸術館に入った途端、ロビーのパイプオルガンが見えて圧倒された。
ここにパイプオルガンがあるということはロビーでの演奏会があるということ。
それはここに来る人にとって音楽が身近なものであることなのだろうと見えた。
「いい場所だな」というのが最初の感想。
その感じたとおりにチェ・スーメイもとても楽しかった。
会場に入って最初に目にするのが「東・西・南・北」の天井から下がった文字のネオンサイン・
ある意味であっけに取られてしばらく見入ってしまった。
再びぎょっとして驚いたのがビデオ作品の「平均律クラヴィーア曲集 Das wohltemperierte Klavier 」
指が曲がらないようにアイスクリームの棒のようなもので指を固定して弾かれる曲。
なぜこんな姿勢で弾かなくちゃならないのか分からないけれど、自由を奪われた形で弾くピアノはどこか痛々しい緊張がある。
そしてピアノの音とともに聞こえる噴水の音はビデオからではなく、隣の部屋にあるものから聞こえてきて、それがちょっとほっとさせる。
が・・・・
その噴水は「多くの言葉 Many Spoken Words 」で噴水の水はインク。
書かれた言葉を元に戻すという意味が込められている。
一旦元に戻されてしまったらそこにかかれていたものは帰ってこない。
噴水の出ている真っ白なはずの天使の像もインクに染まって紫色。
言葉の消えていくさまを見ているよう。
一つ一つの作品がそれぞれに面白い。
扉の閉じているときだけ中が照明される「冷蔵庫 Le frigo 」
ネコののどの音が次々に聞こえる「不眠症の治療 Son pour insomniaques (Sound for insomniacs) 」
ほとんどの針の切り取られてしまった「ウエイティング・ラヴァーズ Waiting Lovers 」
・・・・
そしてやはり秀逸だったのは上の写真のビデオ「エコー L'écho 」
エコーというよりは日本語の木霊のほうがずっとふさわしい作品で、彼女が弾くチェロの音が谷に反射して木霊になって少し遅れて帰ってくる。
深い自然の中で奏でられるチェロ、返ってくる音。
それは人間が作り出した音を自然が返してくれるような感じさえしてくる。
点数自体はたいしたことがないのだけれど、一つ一つが面白い。
すっかり満足して外に出てきたら水戸芸術館のシンボルでもある四面体の塔に登ってきた。

なぜ四面体なのか、その理由は時間がなくてよくわからなかったけれど、この数学的な構造がとても楽しかった。
中のエレベーターの回数表示も△の角度を変えて表示している。

そして中庭には水に打たれる岩。
あたかも岩に感情があるかのように見えてくるのが不思議。

ちょっと(かなり)遠かったけれど、とても充実した一日になった。
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